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柳匡裕MASAHIRO YANAGI

インタビュアー

このたびは、ご出版おめでとうございます。

柳匡裕さん(以下、柳)

ありがとうございます。

インタビュアー

今日のインタビュー会には、まだ著書を読まれていない参加者の方もいらっしゃいますので、簡単に著書のあらすじを教えていただけますか?

本の内容は、「Sign with Me」カフェを開業するまでの十年間、いや二十年間くらいの経緯が書かれています。働くとはなにか、また、ろう者の就労に関する現状等を中心に、紹介しています。

例えば、私は過去に障害者就労支援事業に携わったことがあり、実際に様々な問題や課題を見てきたこと、また、社会起業支援プログラムというものがあるにも関わらず、聴者の視点で考えられたイベントセミナーであったため、コミュニケーション面やろう者の特性に対する理解不足から、ろう者にとって受講しにくく、さらに相談の場もなかったため、ビジネス起業に苦労したこと、なども書かれています。

あとは、起業のきっかけや私の家族のことも書いてあります。長い内容をコンパクトにまとめていますので、読みやすいかも。是非読んでいただければ幸いです。

インタビュアー

なるほど。ろう者の現状なども書かれているのですね。多くの聴者(ろう者の現状を知らない方)にとっては、ろう者の社会現状を知る良い機会となるかもしれませんね。

そうですね。

インタビュアー

執筆した期間はどのくらい、かかったのですか。

長かったですね。裏話をひとつします。

出版のきっかけは、出版社で働いている、ろう者の小野さんからでした。小野さんが勤めている出版社では、一人ひとりが一年に一冊は企画して本を出版するというミッションがあるそうです。私がカフェを開業したことを知った小野さんが、知人を通して出版企画を提案してくれたのです。

私も、ちょうど今まで自分が活動してきたことを次の世代へ伝えておきたいと考えていたところでした。手話で(媒体として)残すことは難しいですが、本であれば文字として残せます。そんな時に、小野さんと出会い、ろう者がろう者に関する本を作るということで意気投合をしたのがきっかけです。三月頃でした。

しかし、出版社の上層部に企画を通すためには、私たちがこの本は売れるという確証を持ち、それを証明する市場データを用意しなければなりませんでした。それくらい出版社側はろう者をテーマとした企画を訝しがっていました。ビジネスですから致し方ないとはいえ、ろう者の社会的立場の低さを痛感させられました。

それでも小野さんはこの本を作りたいという熱意で企画書を出し続けた結果、上司の理解が得られ、ようやく動き始めます。私たちは打ち合わせを重ねに重ね、五月はじめ頃にはやっとその企画が出版社で認められました。

次に、執筆内容についてどうするか。私は忙しく執筆する時間がなかなか無いうえ、執筆しようとパソコンに向かっても、書けませんでした。なぜなら、日本手話と日本語は言語として別だからです。私の頭の中では日本手話で綴れるのですが、それを日本語に訳すとなると大変です。それに私が書くと、どうしても「です」「ます」「べし」など固い文体になってしまい、つまらなくなってしまうのではないかという危惧もありました。

悩んだ末、私は私の友人に頼むことにしました。その友人は、RPG(架空の世界でキャラクターを操って与えられた試練を乗り越え、目的達成を目指すというゲームジャンルのひとつ)のゲームにある台詞やナレーションのような文章を書くことが得意でした。その友人なら私の日本手話を面白おかしく書けそうなので、執筆代行を依頼しました。友人は快諾してくれ、さあ執筆を始めよう、と思いきや、なかなか進まず悪戦苦闘しました。それもそうです。友人も文章を書くプロではなかったからです。

小野さんから、まだかという催促がありました。それは八月頃だったと思います。三ヶ月も過ぎてしまっています。執筆具合はというと、まだプロローグあたりで止まっていました。これにはさすがに小野さんも憤慨し、プロライターは書く内容がまとまっていれば、200ページくらいなら三日間で書き上げられると説明され、私は驚き、焦るばかりでした。

締切が迫る中、次に代筆依頼したのが、元同僚のフリーライターでした。しかし、元同僚は日本手話ができないため、友人の原稿と私のダラダラと取りまとめのないメモ書きを元に、執筆代行という形になりました。ところで(参加者の)皆さんは、超訳(ちょうやく)を知っていますか。

(参加者:知らない人がほとんど)

皆さん若いですね。私が中学生の頃に流行った本なのですが、シドニー・シェルダン氏が執筆した原本を四人の翻訳者によって翻訳されるという手法として有名です。まず、読みやすさとわかりやすさを重視して英語から日本語に訳し、次にその訳された日本語を日本人がより魅力的な日本語に書き直していく、というように何人かの翻訳者やライターが共同作業していく、というものです。

このような方法で、フリーライターの元同僚に代筆していただいたのですが、さすがプロ、二週間で書き上げていただきました。それは九月の終わり頃でした。あとは校正を経て、十月の終わり頃に校了できました。

次は、デザインです。表紙カバー等の装丁デザイン、表紙カバーの紙質材料、ページレイアウトの調整などを決めていきました。それから、帯もありなしかを決める必要がありました。私はまず、帯がない状態でこの本を多くの方に見てもらいましたが、みなさんからは「何の本?」と言われました。確かに(帯がないと)一目見ただけでは、どんな本なのか分かりません。手話カフェ、もしくはオーナーがろう者であることをアピールするためには、帯が必要だと思いました。

この帯には推薦文が載っていますが、この推薦文、実はジャニーズ事務所に所属する小山(慶一郎)さんに依頼を打診したのですが、「日本手話はまだまだ勉強の身なのでこんな私では失礼になる」とやんわりと断られてしまいました。

結局、Sign with Meの提携先の本部の社長に推薦文を依頼しました。ありがたいことに無料で書いていただきました(笑)

このように、さまざまな過程を経て、十一月末ぎりぎりにやっと全ての作業が終わりました。ホッとしました。今思えば、毎晩二~三時までチェック作業していましたので、妻からも、まだ終わらないの?とチクリされる始末でした。さらに、朝六~七時には子どもたちが起きてくるので、眠いのを我慢しながら面倒を見る毎日でした。本当にきつくて大変でした。

でも、そのおかげで、この本はAmazonにて、瞬間的ですが売上部数で一位になりました。今は六位だそうですが、たくさんの方に購入して頂けて感謝しています。

(本を執筆した期間は)全体で半年かかりましたね。普通は二ヶ月で出版されるそうで、半年は長いと言われました。プロの世界は早いですね。

インタビュアー

なるほど。半年かかったのですね。小野さんも無事出版できて喜ばれていることでしょう。

そうですね。それが本当のWin-Win関係(互いにメリットのあるビジネス関係のこと)だと思います。

インタビュアー

次の質問ですが、著書では、ろう者は「福祉は無料で受けられるサービスである」というイメージを持った方が多く、それを払拭するための方法として、聴者とコラボするという話がありました。

Sign with Meでは、ベリーベリースープ(株式会社スープアンドイノベーション)とコラボしていますが、その他にも、今後どのようにコラボしていきたいかといったイメージはありますか?

本にも書いてありますが、いろいろなサービスを利用するときに、障害者は無料または割引で受けられるところが多いです。でもそれには理由があります。例えば、さきほど話した社会起業支援プログラムを受講しても、内容を把握できない(サービスを享受できない)ろう者にお詫びとして、半額返金または無料にします、という感じでしょうか。

もし、その支援プログラムが、ろう者でも100%問題なく受講できる内容であれば、もちろんそのサービスに対して全額払うべきです。でも、社会にあるサービスのほとんどが聴者向けのため、ろう者にとっては使いにくいことから割引もしくは無料とするものが多いのです。

そこで問題となるのは、その割引または無料に慣れてしまったろう者が多いことです。だから、ろう者のためのサービスを提供しても、当然のように割引は?無料?というような姿勢を持った人が多いのです。私は、ろう者のために十分に工夫して考えられたサービスであれば、100%(割引無しで)請求して当然だと考えています。

ビジネスとは何かというと、お金儲けではありません。ビジネスはお金儲けと勘違いされる方が多いですが、そうではなく、次々に繋げるために必要なことです。

もし私が無料でこのビジネスを続けた場合、私は間違いなく倒れます。サービスを提供することも出来なくなります。もしみなさんが私のサービスを提供して欲しければ、私が生きていくためのお金を払って頂く必要があります。そしてお金があれば、より良いビジネスを考案し、新しいサービスを提供することもできます。

そういう関係を私はビジネスと考えています。ところが、それを知らない人たちが多いのです。このことをろう者たちに説得してまわるには、とても時間が足りません。ビジネスとして成立させていくためには、その道のプロと手を組むのが一番早いです。プロとなると必然的に聴者が多くなります。

一方で、ろう者は聴者に抑圧されているという意識があります。私もそうです。そのせいもあって聴者とビジネスで手を組もうという発想がなかなか育ちません。でも反発するやり方では遠回りになるばかりか、空回りして頓挫してしまいます。

聴者とビジネスでコラボしていくことで、聴者という資源をイニシアチブを取りながら活用していく。こうすることで聴者にもろう者にもメリットのある関係が築けます。

そういった(ビジネス)関係を強くアピールした例は、私たちろう者のなかではあまり例がないと思います。私はそういった意味でのロールモデルになりたいと思っています。

インタビュアー

ありがとうございます。

時間が迫ってきたので、最後の質問をさせてください。将来の夢はありますか?

まず身近な夢は、このお店を大きくしたいことですね。このお店は狭いです。倍以上のスペースは欲しいです。

また、カフェだけでなく、勉強や相談もできる場も作りたいです。今みたいな(今回のインタビュー会の)椅子の配置(縦に三列ずつ並んでいる形)だと、周りの顔が見えないので、もう少し広い場所にして、円状に配置して議論ができる広さが欲しい。そのためにいっぱい稼がないといけませんね。そして、広くするだけでなく、雇用も作っていきたいです。

スタッフはろう者だけでなく、日本手話のできる聴者も含みます。つまり手話者(日本手話を使う人のこと)です。ろう者と聴者とで線引きするのではなく、日本手話を使う人と使わない人とで線引きする考え方です。聴者でも日本手話を身につければ仕事ができます。例えば、英語や中国語なども覚えれば仕事を確保しやすい。それと同じです。日本手話を身につければ、ここで働くことができます。

今まで日本手話を覚えるといえば、福祉。かわいそうだから日本手話を覚えてあげなくちゃという流れの中では、ろう者は知らず知らず抑圧されていきます。ろう者聴者関係なく、日本手話を身につければ仕事ができるという考え方が広まれば、少しは変わるのではないかと思っています。もし、ここで仕事がしたいと言われれば、まずは日本手話をマスターしてくださいと私は伝えます。

インタビュアー

ありがとうございました。

続いては質疑応答タイム(15分)です。

質疑応答タイムでは下記のような質問がありました(参加者特典のためここでは回答を掲載しておりません)。

・アメリカのサンフランシスコにもここと似たようなカフェがありますが、ろう者はここみたいに狭いカフェが好きなのでしょうか?(笑)
・なぜ本郷三丁目を選んだのでしょうか?
・ろう者がオープンした珍しいお店だからという理由で、訪れるお客様は多くいますか?
・お客さんに東大生はたくさんいますか?
・私は日本人ではない(アメリカ人)ですが、日本手話ができればカフェで働けるのですか?
などなど

最後に、柳さんから動画メッセージをいただきました。(00分42秒)

Sign with Me のサイトはこちらからご覧いただけます。


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インタビュアー: しかく 佐山信二